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認知症の妻を除いて行った遺産分割協議書は有効か(成年後見制度の利用について)

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要となります。そして、認知症により意思能力を喪失した相続人がいる場合に、その相続人が参加した遺産分割協議は無効となります。

なぜなら民法では遺産分割協議という法律行為をするためには意思能力を有している必要があります。意思能力がない者がした法律行為は無効となります。

相続人に認知症の方がいると、他の相続人で合意した内容での相続ができなかったり、手続きが進まず、財産をすぐに承継できなくなったりします。

対策としては、相続人に認知症の方がいる場合に、遺産分割協議を行うために成年後見制度を利用することができます。

「成年後見制度」とは、精神上の理由により判断能力に欠ける、あるいは不十分な人(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者のほか、自閉症の人々、事故などによる脳の損傷、または脳の疾患に起因する精神上の障害を持つ人々等も含む。)を保護・支援するために裁判所が成年後見人を選任して、契約の締結等を代わって行ったり、本人が誤った判断に基づいてした行為を取り消したりして、本人を法律的に支援する制度です。

契約の締結等の法律行為における意思決定が困難な人々のため、その不十分な判断能力を補い、本人が損害を受けないようにし、本人の権利が守られるように成年後見人が、その財産管理と身上監護を通じて本人を保護することを目的としています。

 

成年後見人を付けることで、認知症の方の代理人となって、成年後見人に遺産分割協議に参加してもらうことができます。不動産の売却の際にも、認知症の方の代わりとなって合意を取ることが可能となります。また相続放棄についても、限定的に成年後見人が手続きすることができます。しかし成年後見人はあくまでも認知症となった本人の財産を守る立場にありますので認知症の方が有する法定相続分を職務として保全する立場にあります。成年後見人の使命は本人の財産を守ることです。ですから本人の不利益になる協議内容には応じることができないため親族間での柔軟な遺産分割協議を行うことはできません。

また成年後見人は親族が選ばれるとは限りません。成年後見人は家庭裁判所によって最も適任と思われる方が選任されます。親族を後見人とするよりも弁護士や司法書士などの専門職の後見人が選ばれる可能性が高いです。令和5年度の成年後見人事件の概況によると約4万件に対して親族以外の成年後見人等が選任されたものが全体の約82%でした。

弁護士や司法書士などの専門家が後見人として選ばれてしまうと、成年後見人には毎月報酬を支払わなければいけません。成年後見の報酬はご本人が保有する財産によって異なりますが、目安としては月2~6万円前後です。

相続手続きが終わったら成年後見人の仕事が終わりではありません。相続手続き完了後も基本的には成年被後見人の方が亡くなるまでの間は成年後見が継続します。成年後見制度は原則として途中で止めることができませんし、専門職の後見人を変更することは余程の理由がない限りは認められませんので、一生涯専門家と付き合っていかなければいけないことになります。

成年後見人はどのように選任されるのでしょうか?

■家庭裁判所での成年後見人申立制度の流れは以下になります。

  • 後見人申立書類の準備
  • 後見人選任申立、申立人及び候補者等の面接・調査
  • 必要に応じて医師による鑑定
  • 後見人選任審判
  • 後見人選任審判確定
  • 法務局での後見登記手続き、後見人としての業務開始

成年後見人の申立手続きを準備し始めてから実際に活動できるようになるまでに3カ月以上かかります。

また手続きに係る書類の準備に相当な負担がかかります。

■法定後見人申立必要書類の事例

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 後見人候補者等事情説明書
  • 親族関係図
  • 本人の診断書及び診断書付票
  • 本人の戸籍謄本・住民票・登記されていないことへの証明書
  • 後見人等候補者の戸籍謄本・住民票
  • 推定相続人の同意書
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 財産は収支を裏付ける資料など

■後見の場合の申立費用は

申立手数料 800円、後見登記手数料2600円、予備郵券3200円、鑑定費用50000円程度(鑑定する意医師の指定する金額)、申立報酬料 100000万円から150000円(弁護士や司法書士に依頼する場合)となります。

成年後見人選任の手続き自体に相当な時間、労力、費用がかかることとなります。

成年後見人をつけたとしても、結局自由に遺産分割をすることはできません。

成年後見制度は勘違いからトラブルになりやすく、後悔されないためにはそのメリットとデメリットのすべてを理解した上で制度の利用を検討することが非常に重要です。

 

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著者行政書士浜田政克
浜田政克行政書士事務所
(大阪府豊中市)

自身の相続に係わる経験から一念発起し、豊中市東豊中町にて行政書士事務所を開業。
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