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遺言執行者とは何をする人? 遺言執行者が単独で行える業務とは?

遺言執行者とは

遺言執行者とは遺言者が亡くなられた後、遺言書の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為を有する責任者のことです。

遺言執行者には、相続人の一人やそれ以外の親族の方、相続人の委任を受けた専門家等が担うケースがあります。特別な資格は必要ありませんので誰でもなることができますが、民法1009条により未成年と破産者はなることができません。

遺言執行者の選任

遺言執行者を選任する方法は2つあります。

・遺言書で遺言執行者を選任する

・相続開始後に家庭裁判所に選任してもらう

遺言書で遺言執行者に指定されていても、本人が遺言執行を行わなければならないという義務は発生しません。

遺言執行者への就任を断ることもできますし、第三者に依頼することも可能です。

相続人への通知義務

旧民法では、遺言執行者には、相続財産の目録を作成して、相続人に交付すべき義務はありましたが遺言の内容を相続人に通知する義務についての規定は存在していませんでした。

令和元年の民法改正により、遺言執行者が就職した場合には、遅滞なく、遺言の内容を

相続人に通知しなけれなならなくなりました。

(遺言執行者の任務の開始)

第1007条

1.遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

2.遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

遺言執行者が就職したことを相続人に通知することによって以下のような効果があります。

・相続人による相続財産の処分行為等を防ぐ。

・金融機関に通知することで、遺言者名義の預貯金の払戻しを防ぐ。

遺言執行者が就職したことを相続人に通知するには、相続人に遺言執行者就職の通知書を郵送するか、法要等で相続人が集まる場面で報告する方法があります。

遺言執行者の主な仕事

・遺言者の死亡連絡を受け、遺言執行者として就職の通知を行う。

・遺言者の財産に係る預貯金通帳や不動産権利証などを預かり管理する。

・相続人の調査

遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本を収集したり、推定相続人の戸籍謄本や住民票の写しを収集し法定相続人の調査を行い、相続関係説明図を作成します。

・相続財産の調査

遺言書に記載されている財産の存否や変動を調査します。

金融機関から残高証明を取り寄せたり、不動産に係る書類を取り寄せたりして相続財産の調査を行い、相続財産目録を作成します。

・相続人及び受遺者へ遺言書及び財産目録の交付とその内容に関する説明を行います。

・遺言書の内容通りに遺産名義変更または処分、預貯金の解約手続きを実行します。

・遺言執行者はすべての職務を完了した場合、相続人および受遺者に職務完了報告書によって遺言執行が完了したことを報告します。

遺言執行者が単独で行える業務

特定財産承継遺言による相続

民法改正により2019年7月1日以降に作成された特定財産承継遺言であれば、遺言の内容によっては遺言執行者が単独で名義変更などの手続きを行うことができるようになりました。

特定財産承継遺言とは、「特定の財産を特定の相続人に相続させる内容」の遺言のことです。

子どもの認知

遺言書で子の認知がされていた場合、戸籍法により認知の届出は遺言執行者が行わなければなりません。遺言で遺言執行者が選任されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任をしてもらう必要があります。

相続人の廃除

遺言書で相続人の廃除や取り消しがされていた場合、遺言執行者による家庭裁判所への申立てが必要になります。

推定相続人の廃除については民法に定められおり、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱をしたり、著しい非行を行ったりした場合は、推定相続人の廃除を裁判所に請求することができるとされています。

遺言執行者は代理人に遺言執行を依頼することができる(復任権)

遺言の内容によっては、遺言執行者の職務が広範におよぶ場合や、専門の法律知識が必要となり、専門家に任せた方が適切なこともあります。

遺言執行者が第三者にその任務を行わせることを復任権といいます。

この復任権によって遺言執行者が遺言執行について弁護士等の専門家に依頼することができるようになりました。

遺言執行者を選任するメリット

相続手続きが円滑に進む

遺言執行者を定めておくと、他の相続人を代表して、相続人の調査、相続財産の調査などの相続手続きをすべて行えるので、相続手続きがスムーズに進みます。

相続人が勝手に財産を処分できなくなる

遺言執行者には相続財産の管理処分権限があります。

そのため、他の相続人は被相続人の財産を勝手に処分することはできなくなります。

つまり、相続人による相続財産の処分行為等を防止したり、金融機関に通知することで、遺言者名義の預貯金の払戻しを防止する効果があります。

子の認知や相続人の廃除、取消しができる

子の認知や相続人の廃除、取消しは遺言執行者にしかできません。もし選任されていなければ家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

遺言執行者を選任するデメリット

他の相続人とトラブルになることがある

相続人の中から遺言執行者が選任された場合、他の相続人とトラブルになることがあるため注意が必要です。

「自分に有利になるように相続手続きをしているのではないか。」「不正な相続手続きをしているのではないか。」などと疑われ、特に相続人間で仲が悪い場合はトラブルに発展する可能性があります。

相続に関する知識不足で相続手続きが進まない

相続に関する知識がない相続人が遺言執行者に選任された場合、相続手続きがスムーズに進みません。

相続人の調査や相続財産の調査は、専門的な知識を必要とします。

不備があればやり直しの作業が発生したりして、相続手続きに相当な時間を要することがあります。

相続人および相続財産が多い場合、遺言執行者には相当な負担がかかります。

専門家に遺言執行を依頼すると費用がかかる

弁護士などの専門家が遺言執行者に選任された場合、相続手続きをスムーズに行ってもらえますが当然に報酬が発生します。相場としては遺産総額の1%から3%程度とされています。

まとめ

遺言執行をスムーズに進めるためには専門家に依頼することがベストですが報酬が発生します。ただし相続人の中から遺言執行者を選任した場合、遺言執行者となった相続人に相当な負担がかかったり、相続人間でトラブルが発生する可能性があります。

もし遺言執行について不安や心配がある場合は専門家に相談することをお勧めいたします。

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著者行政書士浜田政克
浜田政克行政書士事務所
(大阪府豊中市)

自身の相続に係わる経験から一念発起し、豊中市東豊中町にて行政書士事務所を開業。
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情報セキュリティ、個人情報保護法に精通し、「デジタル社会に迅速に対応できる法律家」として日々研鑽を積み重ねております。

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