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遺言執行者の実務と依頼する際に気を付ける事
遺言執行者とは遺言者が亡くなられた後、遺言書の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為を有する責任者のことです。
遺言執行者には、相続人の一人やそれ以外の親族の方、相続人の委任を受けた専門家等が担うケースがあります。特別な資格は必要ありませんので誰でもなることができますが、民法1009条により未成年と破産者はなることができません。
■遺言執行者とはどんな仕事をするのでしょうか?
・遺言者の死亡連絡を受け、遺言執行者として就職の通知を行う。
・遺言者の財産に係る預貯金通帳や不動産権利証などを預かり管理する。
・相続人の確定:
戸籍謄本等を収集し法定相続人の調査を行い、相続関係説明図を作成します。
・相続財産の調査:
金融機関から残高証明を取り寄せたり、不動産に係る書類を取り寄せたりして相続財産の調査を行い、相続財産目録を作成します。財産目録は相続人にとって相続の方法(単純承認・限定承認・相続放棄)を検討ことにおいて極めて重要な情報となります。
・相続人及び受遺者へ遺言書及び財産目録の交付とその内容に関する説明を行います。
・遺言書の内容通りに遺産名義変更または処分、預貯金の解約手続きを実行します。
・遺言執行者はすべての職務を完了した場合、相続人および受遺者に職務完了報告書によって遺言執行が完了したことを報告します。
■遺言執行者が遺言執行において苦労する場面
・相続財産の調査し、把握すること
遺言執行者には、相続財産を調査し、相続財産目録を作成する法的義務があります。
親族と同居せずに一人暮らしをしていた方など相続財産を調査するのに相当な労力がかかることが多いです。
不動産の場合は、権利証の確認や固定資産税の納税通知書を確認したり、遺言者のゆかりのある市区町村の役所へ赴いたりします。
預貯金の場合は、金融機関に対して預貯金やその他の金融商品の取引や貸金庫の有無等の調査を行います。口座を有する支店とは異なる支店の口座が存在することもあります。
このように地道に相続財産の確認作業を行うことは相続人等にとって相当な負担となります。
遺言書で財産全体の内容が確認できるということもありますが実際の実務においては自筆証書遺言、公正証書遺言ですべてを網羅することは非常に難しくと言わざるを得ません。
・相続人・受遺者へ遺言書、相続財産目録を交付し、説明をすること
遺言執行者には、法定相続人及び受遺者(遺言書に継承者として記載のある方)に対し、作成した相続財産目録と遺言書を交付する法的義務があります。
当然のことですが交付するだけではなく、その内容について遺言執行者が説明を行い、相続人等に対して内容を理解していただく必要があります。
遺言書や財産目録の内容の説明についてはわかりやすく丁寧に行うことがとても重要となります。
相続人、受遺者全員がその内容について納得することが円満円滑な相続手続きのために必要となります。このような場面に取り組むことは非常に慎重かつ神経を使うとこととなり、遺言執行者の方におきましては相当な負担となることと存じます。
・遺言者の死亡した事実を知ることができない場合がある。
遺言執行者が身内である場合には問題はないと思いますが、第三者が遺言書で遺言執行者に指定されているような場合には、遺言者が死亡したという事実を知らされないと遺言執行者としてその役割を果たすことができません。もちろん遺言書で第三者が遺言執行者に指定されていることを事前に知らされている場合には、遺言執行者は遺言者と定期的に連絡をとり、安否を確認する必要があると思います。
■もし遺言執行者になってほしいと頼まれた、または遺言執行者に指定されていたとしたらどのように対応すればよいのでしょうか?
遺言執行者としての任務を行うことに対して負担に感じる場合をあろうかと思います。
具体的な対応は以下の二つになると思われます。
・遺言執行事務を第三者に委ねる。
遺言執行は遺言執行者がすべてを行う必要はなく、民法1016条によって必要に応じて第三者に任務の一部または全部を委任することが可能です。
遺言執行者が相続人である場合などは、遺言執行者からの委任状により代理人が法定相続人を調査して相続関係図や法定相続情報一覧図を作成したり、相続財産を調査して相続財産目録を作成したり、遺言執行者に代わって預貯金解約手続きや遺産名義変更手続きを行ったりすることができます。
ですから遺言執行の実務を必要に応じて行政書士や司法書士などの専門家に手伝ってもらうことは非常に有益であると思います。
・遺言執行者への就任を辞退する
遺言執行者への就任はあくまでも任意なので、無理かなと思ったら、遺言執行者への就任を辞退するということも可能です。
遺言書で遺言執行者に指定されているような場合、遺言執行者への就任を辞退するには、遺言書についての利害関係者である相続人等、遺言書に記載のある受遺者全員に対し、遺言執行者就任辞退の意思表示を行う方法があります。電話や口頭でも構いませんが後々のトラブルを防止するためにも文書で通知する方がよいかと思います。
遺言で指定された遺言執行者がその就任を辞退した場合、相続人等の利害関係人(法定相続人や遺言書に名前のある受遺者など)が家庭裁判所に対し、遺言執行者選任申立てを行い、家庭裁判所が遺言執行者を選任することができます。また、申立てに際に、遺言執行者の候補者を推薦することもできます。
しかしながら遺言執行者に就任してから辞退するには家庭裁判所の許可が必要になりますので注意が必要です。
遺言執行者には遺言者に代わって遺言者の最終の意思を遺言書の内容とともに実現するという重要な任務を行うため、いったん就任したら簡単には辞任することができません。遺言執行者が辞任するには、民法により辞任をするための正当な事由をもって家庭裁判所の許可を得ることが必要となります。そして家庭裁判所は辞任をすることの正当な事由があると判断したときでなければ遺言執行者の辞任を許可することができません。
これらのことを理解した上で遺言執行者を引き受けるかどうかを検討しましょう。
遺言執行者には重い責任とともに実務として相当な負担があることがご理解いただけたと思います。
■遺言執行の負担を軽減する対策
いざというときに遺言執行をスムーズに行うには遺言書を作成する段階から対策を行うことが重要です。
・相続財産の調査し、把握することへの対策
遺言とは別にエンディングノートを作成しておくなど財産全体の把握を円滑に行えるようにしておくことが必要となります。
・相続人・受遺者へ遺言書、相続財産目録を交付し、説明をすることへの対策
遺言書の内容をわかりやすくしておくことや法定相続人の遺留分を侵害しない遺言内容にしておくこと、付言事項を作成して相続人への理解を促す工夫をすることなどがあります。
・遺言者の死亡した事実を知ることができない場合への対策
遺言者自身が信頼している方にご自身に万が一のことがあった場合に遺言執行者へ連絡することを依頼しておくこと。
遺言執行者の連絡先をエンディングノート等に記載しておくことは対策として有効です。
自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、遺言者の死亡後に遺言者が指定した遺言執行者に法務局によって通知してもらえるサービスがありますのでぜひご活用ください。
■遺言執行者を依頼するにあたり検討すべき点
・遺言執行者には公正かつ中立で法律に詳しい方を選びましょう。
・自分より年齢が若い方を選ぶ。一回り(12歳程度)は若い方を選びましょう。
・遺言書で遺言執行者を指定する場合は、その方に事前に相談し、承諾を得ておきましょう。
より円満円滑な相続手続きの実現するためには遺言作成だけではなく、様々な準備と配慮が必要となります。
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