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遺言書とエンディングノートの違い
遺言書とエンディングノートは、作成する目的が異なります。また遺言書には法的効力がありますがエンディングノートにはありません。
エンディングノートは、遺言書とは異なり、特に決まった要件や様式がありませんので比較的取り組みやすいものとなっています。
■遺言書とは
遺言書は自分の相続財産を誰にどれだけ、どのように譲りたいかについて記すことができます。
遺言書がある場合で、遺言者が相続の内容について記載がされていた場合、その内容に沿って遺産分割を行うことになります。
遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示とされています。
民法964条においても遺言者は遺言によって財産の全部または処分することができると認められています。
また、遺言とは大切な遺族に対して「最後のメッセージを遺す」という意味もあるそうです。
相続においては遺言者の意思が最優先されるため、遺言書の内容は遺産分割協議や法定相続分に優先します。
よって遺言書があれば、遺産分割協議は必要ありません。
■エンディングノートとは
エンディングノートとは、自分自身に何かあった時に備えて、ご家族が様々な判断や手続きをするときに困らないように必要な情報を書き記したノートです。
例えば自分の情報や財産の状況、家族に対する想い、病気になった時のこと、お葬式やお墓について、残りの人生でやりたいことなど終活を通じてご自身が考えたことや対策したことをまとめておきます。
そしてこれまでの人生を振り返ることにより、これからの人生を考えるきっかけとなります。また使ってみることによって、いままで気づかなかったことを見直しすることができます。
終活でやるべきこと、必要なことを項目ごとにリスト化してまとめてあり、終活全体のイメージを理解することができます。
エンディングノートは、遺言書のように決まり事がありませんので気軽に作成することができます。
■遺言書に書く内容
民法上は以下の遺言事項について書くことができます。これ以外の事項を書いても良いですが、法的な拘束力はありません。
①遺産相続に関する事項
・推定相続人の廃除、廃除の取消し
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる制度です。つまり被相続人の意思にもとづいて、その人の相続権を失わせることができます。
遺言で相続人の廃除をしたり、廃除を取り消したりできます。
なお、廃除の申立ては遺言執行者しかできません。ですから遺言書で遺言執行者の指定をしておく必要があります。
・共同相続人の相続分の指定又はその委託
遺言者は遺言により法定相続分とは異なる各相続人の相続分を指定することができます。また第三者に相続分の指定を委託することができます。
相続分の指定がされると、法定相続分に優先して各共同相続人の相続分が定まります。
相続分の指定はあくまで各相続人の相続分の割合のみを指定しているため、相続人全員で誰がどの財産を受け継ぐかを話し合い決定しなければなりません。
ただし、相続債務の債権者はこのような遺言の内容に従う義務がありませんので、相続債権者は相続分の指定にかかわらず法定相続分に応じて請求をすることができるので注意が必要ですね。
・特別受益者の受益分の持ち戻し免除
遺産分割において相続分から差し引かれる生前贈与や遺贈などによる特別受益を考慮に入れないように免除することができます。
・遺産分割の方法の指定又はその委託、遺産分割の禁止
財産をどのように分けるか、具体的な遺産分割の方法を指定することができます。また、第三者に分割方法の指定を委託することができます。
相続開始から5年を超えない期間を定めて、財産の分割を禁止することができます。遺言書で遺産分割が禁止されていたら、相続人全員が合意しても遺言書と異なる遺産分割協議は無効となります。
・共同相続人の担保責任の定め
相続後の相続人同士による担保責任を軽減したり、加重したりできます。
遺産分割により瑕疵のある財産を相続した相続人は、他の相続人に対し、損害賠償の請求を行うことができます。
ただし、この責任は実際に受け取った財産に応じた責任であるため、財産を相続した割合によって負担する割合も異なります。
・遺言執行者の指定又は指定の委託
遺言内容を実行させるための遺言執行者を指定しておくことや、第三者に指定を委託することができます。
もし指定のない場合は、利害関係人(相続人、受遺者など)が家庭裁判所へ申し立てをすることで、遺言執行者の選任を受けることができます。
②財産処分に関する事項
・包括遺贈・特定遺贈
遺贈には、包括の名義での遺贈(包括遺贈)と特定の名義での遺贈(特定遺贈)があります。
遺贈は遺言によって財産の割合を指定して、特定の財産を誰かに引き継がせることです。
財産を相続人以外の人に贈与することもできます。
・遺留分減殺方法の指定
民法改正前の規定です。令和元年6月30日までに開始した相続については、遺留分の侵害額請求を受けた際の負担額の順序を遺言で指定することができます。
・寄附行為
財産を寄付することができます。財団法人を設立することができます。
・信託の設定
財産を指定した信託銀行等に預けて、管理、運用してもらうことができます。
③身分行為
・認知
婚姻関係にない相手との子その親子関係を認めることができます。胎児に対してもできます。
自分の子どもであると法的に認めることになります。
・未成年者の後見人の指定
推定相続人に親権者のいない未成年がいる場合、後見人の指定をすることができます。さらに後見人を監督する後見監督人の指定をすることができます。
・未成年者の後見監督人の指定
未成年後見人を指定することができる者は後見人を監督する後見監督人の指定をすることができます。
④その他
・祭祀承継者の指定
先祖の祭祀を主宰する人、墓や仏壇などを受け継ぐ人を指定できます。
被相続人による祭祀主宰者の指定方法は、方式についての定めがなく、生前行為や遺言によれば十分であって、それらは、口頭でも、書面でも、明示的でも、黙示的でもよいとされています。
■エンディングノートに書く内容
①自分自身のこと
人生を振り返ります。自分自身の基本情報、これまでの思い出、大切な方の連絡先、家族や大切な人に伝えておきたいことをまとめます。
自分がこれからやりたいこと、やり残していることを実行するきっかけになります。
②お金や財産について
認知証や体が不自由になった場合の財産管理の希望について記載しておきます。
預貯金口座、口座引き落とし、借入金、その他金融資産、不動産の一覧を記載しておきます。
相続関係のこと、遺言書の有無、遺言書の保管場所、遺言執行者などを記載しておくことによって相続財産手続きに役立ちます。
③認知症や介護について
「できるかぎり自宅で介護を受けたい」「症状にあった高齢者施設等に入所したい」など介護が必要になった場合に備えて、介護の希望について記載しておきます。
認知症になった時や介護が必要になった時に自分で財産管理をすることが困難になります。財産管理の希望や財産管理をお願いしたい信頼できる方、介護の内容についての希望、介護者に伝えておくべき情報をまとめておきます。
④医療のこと
病気になったときに最適な医療ケアを受けるための判断材料になります。
病名や余命の告知、延命措置に関する希望、意思表明の書類等の有無、終末期医療などの希望を記載しておきます。
⑤お葬式やお墓について
葬儀や納骨、お墓などの希望について必要な情報を記載しておきます。
葬儀には一般葬や家族葬などいろいろなスタイルがあります。具体的に葬儀内容の希望を伝えているとご家族も判断しやすくなります。
祭祀のこと、お墓、供養に関する要望があれば記載しておきましょう。特に希望がなければ家族に任せることも検討しましょう。
エンディングノートを書くにあたってイメージとしては、自分自身のホームページを作成することに近いのではないかと考えます。
■まとめ
遺言書には法的効力がありますがエンディングノートにはありません。
また遺言書の有無で相続手続きが異なります。
遺言書がない場合は、相続財産の調査や遺産分割協議など残された家族に相当な負担がかかります。
もし、身分に関すること、財産の処分に関すること、相続に関することにご自身の意思を確認に反映させたい場合には遺言書の作成をご検討ください。
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