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財産を相続させたくない相続人がいる場合の5つの対策

財産を相続させたくない人がいる場合の5つの対策

・前妻の子供に財産を相続させたくない

・両親にお金を無心していた兄に財産を相続させたくない

・老後の面倒をみてくれなかった長女には財産を相続させたくない

・妻に全財産を相続させたいので兄弟には財産を相続させたくない

など、財産を相続させたくないと考えることがあるかもしれません。

そのような場合にはどのように対策することができるのでしょうか?

相続させたくない相続人の相続権を容易にはく奪することはできない

相続人には相続する権利があります。

民法には、被相続人が死亡した場合にその財産がどのように相続されるかということを定めた基本的なルールが示されています。

原則、遺産を相続する権利がある人は法定相続人です。

この考え方は、昔、家督相続が中心であった時代は、戸主の自由な財産処分を制限し、家産の散失を防ぐことが目的だったことから派生しています。

現在では、遺言における自由な財産処分に制限を設けて、残された相続人の生活を守るために民法に規定されているということになります。

ですから、法定相続人の相続権を容易にはく奪することはできません。

親や子供、配偶者の遺留分を侵害することはできない

被相続人が長女に相続財産を相続させたくないと考えたとして、その意思表示をしたとしても長女の相続権を奪うことは非常に難しいです。

なぜなら、一定範囲の相続人には遺留分が認められるからです。

遺留分とは、一定範囲の相続人のために、相続に関して法律上取得することが保障されている相続財産保留分のことをいいます。

遺産を誰に、どのように相続させるかは遺言者が遺言で指定できますが、特定の人へ財産を集中し承継させる場合は、他の相続人の遺留分を侵害することがあるために注意が必要となります。

ただし、遺留分を侵害した贈与や遺贈などは、法律上当然に無効となることはありません。そして遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行った場合は、その遺留分を侵害する限度で効力を失うことになります。要するに配偶者や子供に財産を相続させないという趣旨の遺言書を作成しても、配偶者や子供に遺留分侵害額請求をされたら遺留分に相当する金銭を取り戻されてしまうことになるのです。

尚、兄弟姉妹には遺留分がありません。兄弟姉妹に財産を相続させたくない場合には、遺言書によって兄弟姉妹に財産を相続させない旨の内容を書いていれば、兄弟姉妹に財産を相続されることはありません。

特定の相続人に財産を相続させたくない場合の5つの対処方法

相続させたくない人がいる場合の対処方法については、被相続人となる方の家族関係や財産状況などで最適な方法が異なります。また専門的な知識も必要となりますので、まずは専門家に相談することをおすすめいたします。

①生前贈与して財産を減らす

生前贈与をして相続開始の時までに財産を減らしておくという方法があります。

生前に配偶者に多くの財産を贈与しておけば、他の相続人に対して相続させる財産を減らすことになります。

ただし、生前贈与によって遺留分を侵害する可能性があります。

例えば、相続財産が不動産のみの場合、配偶者に不動産を生前贈与すると、他の相続人に対して相続権を侵害することになってしまいます。

法定相続人に対して行われた相続開始前10年以内の生前贈与は遺留分の対象になりますので注意が必要です。

また、生前贈与すると贈与を受けた人に特別受益が発生します。

相続の際に公平に遺産分割を行うために、特別受益を他の相続人へ返さねばならない可能性があります。この特別受益の持ち戻しを防ぐためには、遺言書で特別受益の持ち戻しの免除を意思表示する必要があります。

②遺言をすることによって相続させない

遺言書があれば、その内容に沿って遺産分割を行うことになります。

遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示とされています。

民法964条においても遺言者は遺言によって財産の全部または処分することができると認められています。

相続においては遺言者の意思が最優先されるため、遺言書の内容は遺産分割協議や法定相続分に優先します。

遺言があれば、基本的に遺言通りに遺産を分けることになります。

例えば、被相続人が生前に世話をしてくれた長男にすべての財産を残し、長女には相続させたくないと考え、「長男に全財産相続させる」といった遺言内容を作成したとします。

この遺言書の内容に対し、長女が納得するなら問題はありませんが長女には遺留分があります。

遺言の内容によっても遺留分までは侵害することはできません。

被相続人の死後に長女が遺留分侵害額請求をすることによって、長男は長女へ遺留分に相当する金銭を返還しなければなりません。

相続させたくないという観点から遺言書のみでは完全な対策をすることはできないでしょう。

しかしながら長女へ相続させる財産を減らすことにおいては有効な手段をいうことができます。

また、付言事項を記載することによって遺留分侵害額請求を回避することもできるかもしれませんが相続トラブルを避けるために遺言書で長女に最低限の遺留分に相当する財産を相続させる旨を記載することも検討する必要があります・

③第三者に遺贈したり死因贈与をすることによって相続させない

第三者に遺贈や死因贈与をする方法があります。

贈与とは、贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、成立します。家族だけでなく、第三者でも財産を無償で譲れば贈与となります。生前贈与などは、生きているうちに財産を引き継ぐことができるので安心であるというメリットがあります。

死因贈与とは、贈与者が死亡することによってあらかじめ取り決めていた財産を特定の人へ渡すことを約束した契約行為です。贈与者(財産を与える人)が生きている間に、受贈者(財産を受け取る人)と合意していることが条件となります。死因贈与契約は贈与者が死亡することによって、死因贈与契約の効力が発生します。

具体的には、「私が死んだら自宅を長男に贈与する」というような内容になります。

民法でも、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用することとなっており、遺贈と同じような効果をもたらせます。

遺贈や贈与は、法定相続人以外の人へもできます。たとえば孫や長男の嫁、甥や姪、生前にお世話になった人へ遺贈したり死因贈与すると、財産を法定相続人以外の人へ譲ることができます。

ただし、遺贈や死因贈与も遺留分侵害額請求の対象になるので、完全な対策とは言えないでしょう。

④相続人の廃除の申立て

相続人廃除とは、非行のあった相続人から相続する権利を奪う手続きのことをいいます。

廃除された相続人には、相続の権利が認められなくなりますので相続財産を相続されることはありません。

また廃除された相続人委は遺留分も認められないので、遺留分侵害額請求をされることもありません。

相続人の廃除は、遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となる者)の廃除を家庭裁判所に請求する方法により行います(民法892条)。ただし、無条件に請求できるわけではなく、「遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」に限られます(民法892条)。

なお、廃除された相続人が被相続人の子である場合は、その者に子がいれば、その子が廃除された相続人に代わって相続人となります(民法887条2項本文)。

廃除の規定は、厳格に判断されますので簡単には認められません。

単に仲が悪いという理由では廃除することはできませんので注意が必要です。

⑤相続欠格事由に該当していないか?

相続に関して不正を犯して財産を手に入れた場合などには、相続人の相続する権利がありません。

このことを相続の欠格といいます。

民法891条で相続欠格の事由が規定されています。

1.故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

これらに抵触する事実を行ってしまった場合、「欠格者」となり、財産する権利は奪われます。遺言書があったとしても相続財産を受けとることはできません。

まとめ

配偶者、子供、父母(祖父母)などの法定相続人に認められている相続の権利は法律で守られています。

遺言書によって相続する権利を奪うことは非常に限定的です。

相続人の廃除においても認められることは非常に難しく2020年度においても相続廃除が認められた割合は約20%とのことです。

相続させたくない相続人がいる場合には、生前贈与や遺言書の作成などをいろいろ組み合わせて対策することも効果的です。

相続においては家庭の状況、財産の内容で最適な対策は異なります。

わからないことや不安なことがあった場合は専門家に相談することをおすすめいたします。

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著者行政書士浜田政克
浜田政克行政書士事務所
(大阪府豊中市)

自身の相続に係わる経験から一念発起し、豊中市東豊中町にて行政書士事務所を開業。
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情報セキュリティ、個人情報保護法に精通し、「デジタル社会に迅速に対応できる法律家」として日々研鑽を積み重ねております。

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