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成年後見制度と家族信託の違い
成年後見制度と家族信託の利用について
厚生労働省の調査によると成年後見制度の利用件数は令和5年度で約249,000となっており近年増加傾向にあります。成年後見制度の利用促進のために制度の見直しや運用の改善などの検討が進められています。
家族信託の利用については2018年の公正証書作成数は2,223件で、その後も増加傾向にあるそうです。
また2025年の認知症の有病者数は約700万人になると言われており。今後ますます成年後見制度や家族信託の利用が活発になってくると思われます。
どちらも高齢者の財産管理を本人以外が管理するための制度ですが、本人および家族にとって最適な制度を選択するには、成年後見制度と家族信託について正しく理解する必要があります。
成年後見制度と家族信託のそれぞれの目的と仕組み
成年後見人制度の目的
「成年後見制度」とは、精神上の理由により判断能力に欠ける、あるいは不十分な人(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者のほか、自閉症の人々、事故などによる脳の損傷、または脳の疾患に起因する精神上の障害を持つ人々等も含む。)を保護・支援するために援助者を選任して、契約の締結等を代わって行ったり、本人が誤った判断に基づいてした行為を取り消したりして、本人を法律的に支援する制度です。 契約の締結等の法律行為における意思決定が困難な人々のため、その不十分な判断能力を補い、本人が損害を受けないようにし、本人の権利が守られるように選任された援助者が、その財産管理と身上監護を通じて本人を保護することを目的としています。
成年後見制度の仕組み
成年後見制度には法定後見と任意後見の2種類があります。
・法定後見とは、本人の判断能力が低下してしまった方、または判断能力が不十分な方を保護し、支援する制度です。
認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が衰えた方は、日常の生活においてさまざまな問題に直面します。預貯金や不動産など自身の財産を管理することが難しく、介護や福祉のサービスに対して自分で適切な契約ができなかったりします。またこのような方を対象にした悪質商法による被害に遭うことが考えられます。
家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(補助人・保佐人・成年後見人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。
・任意後見は、自分自身が元気なうちに、この先あれこれ決められなくなる前に、将来の支援者と支援の内容をあらかじめ定めて自分らしい生き方を自ら決めるための契約をしておく制度です。
支援が必要な人を「本人」、支援する人を「任意後見人」といいます。
利用方法は法律で決められています。
任意後見制度を利用するには、支援者との間で公正証書によって任地後見契約を締結します。
やがて本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所への申立てによって任意後見人の後見事務を監督する「任意後見監督人」が選任されます。これによって任意後見が開始します。
家族信託の目的
家族信託の目的は、自分の財産を自身の意向に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せることです。
人は、高齢であることや病気になるなどさまざまな理由で、自分自身で財産を管理することが難しくなってしまうことがあります。
自分に代わって、判断能力のある家族に管理してもらうことで、自分の財産を無駄にすることなく、効率的に管理をすることができます。
家族信託を行うことによって、認知症による口座凍結の対策をすることができます。
家族信託の仕組み
家族信託は財産の管理、運用を信頼できる家族に託すことなのですが、これらは「委託者」「受託者」「受益者」の三者で構成されます。
・「委託者」とは、財産を信託する人です。
・「受託者」とは、委託者から信託された財産の管理、運用および処分を任される人です。
・「受益者」は、信託された財産より生ずる経済的利益を受ける人です。
委託者が自身が所有する財産の管理を受託者に任せ、その財産を受託者が管理、運用、処分し、その財産から発生した利益を受益者が得る仕組みになっています。
家族信託では親のために子どもが財産を管理します。財産管理により生じた利益は所有者である親が得ることになります。委託者と受益者は親であることがほとんどです。
成年後見制度と家族信託の費用の違い
成年後見人制度の費用
法定後見と任意後見では費用が異なります。
以下のような費用が相場となっています。
①法定後見制度
・収入印紙および郵便切手:1万円ほど
・登記嘱託手数料:1,400円
・鑑定費用:6万円ほど
・診断書作成費用:5,000円ほど
・成年後見人への基本報酬:月額約2万~6万円
・成年後見監督人への報酬:月額~3万円ほど
②任意後見制度
・申立費用(収入印紙):800円
・登記費用(収入印紙):2,600円
・郵便切手(審判書送付用):3,200~3,500円ほど
・専門家の費用:10万~20万円ほど
・成年後見人報酬:親族等の場合は月額0~5万円ほど、専門家の場合は月額2万~6万円ほど
・任意後見監督人報酬 月額~3万円
家族信託の費用
家族信託は専門家に依頼することが多く、初期の導入費用がかかります。
・コンサルティング料:信託財産の1.1%程度
・信託契約書の作成費用:10万~15万円ほど
・公正証書の作成費用:3万~10万円ほど
・登録免許税(不動産の場合):固定資産評価額の0.3~0.4%
・信託登記費用:10万~15万円ほど
成年後見制度は家族信託に比べると、専門家に手続きを依頼したとしても初期導入費用は安くすみます。しかし成年後見制度は月額報酬というランニングコストがかかるため、制度を利用する期間が長くなればなるほど費用が高くなります。
成年後見制度が向いているケース
①財産管理だけでなく身上監護も必要なケース
成年後見人は、介護施設への入居手続きや医療機関への入退院手続きなど、本人が適切な環境で生活するための法律行為を行うことができます。
それに対して、家族信託は財産管理を主たる目的としているため、これらの手続きを行うことができません。
財産管理以外の身上監護等の法律行為を行う必要がある場合は、成年後見人制度の利用を検討するべきです。
同居している親子や近隣の親族がいる場合は身上監護を行うことができる場合がありますが、そうではない場合は成年後見制度を活用して後見人に身上監護をしてもらう方がよいと思います。
②頼れる身内がいないため専門家に財産管理や身上監護を任せたい
家族や親族の仕事が忙しいため、財産管理や身上監護をお願いしづらい場合があります。
また財産管理や身上監護を任せるほど信頼できる家族・親族がいない場合もあります。
そのような場合には専門家に成年後見人や任意後見人になってもらい、財産管理をしてもらうことを検討しましょう。
家族信託が向いているケース
①柔軟に財産管理を任せたい
家族信託では、家族で話し合い、自由に資産を有効活用する方法をきめることができます。成年後見制度では本人が生活するために必要な法律行為をすることはできますが、本人にリスクとなる財産の処分や運用などはすることができません。
株式投資や資産組換えや不動産の利活用など柔軟に財産管理を行いたい場合に、家族信託の利用を検討した方がよいと思います。
②裁判所や第三者に関与されたくない
成年後見人制度の場合、裁判所によって司法書士や弁護士などの第三者が後見人に選任される可能性があります。近年、司法書士や弁護士が後見人に選任されることが増えています。
任意後見制度の場合でも、裁判所によって選任された第三者である任意後見監督人が後見人の業務を監督することになります。
また後見人は、民法の規定により、監督人または裁判所に対し、後見事務の報告と財産目録を定期的に報告する義務が発生します。家族・親族の方が後見人となった場合にはこのような煩雑な事務の負担をできるかどうかもあらかじめ判断しておかなければなりません。
家族信託の場合は、裁判所に関与されることがありません。従って第三者に介入されることなく家族で話し合って決めた契約内容に従って自由に本人の財産の管理をすることができます。
③ランニングコストの負担を軽減したい
家族信託は初期費用が高額になります。ただし一度契約を締結すればその後のランニングコストはかかることはありません。
成年後見人制度の場合、初期費用は家族信託に比べて費用は安いですが、後見人や後見監督人へ月額報酬が発生するため長期的に見た場合に家族信託の方が費用の負担は少なくてすみます。毎月かかりますし、イレギュラーな業務が発生した際の別途報酬も発生します。
本人の長期的なサポートがあらかじめ予測される場合は費用面だけを比較すると家族信託の方が優位です。
④次の世代まで相続人を指定したい
家族信託には、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」という、自身が亡くなったときの相続人と、その次の代相続先も決めることができる制度があります。
この制度を利用して一代限りではなく何世代にもわたって資産の承継者を指定することができます。
信託契約で本人を支える一代だけの仕組みではなく、その次の高齢の妻を支える財産管理の仕組みに加え、障害を持つ子がいた場合に更に子を支える仕組みを設計することができるのです。
まとめ
成年後見制度と家族信託はどちらも認知症などで判断能力が低下した本人の財産を管理・保護できる制度となっています。
認知症となる前後のタイミングや財産管理に加えて身上監護も必要な場合などで制度を利用する判断材料は異なります。
家族関係の状況、財産の状況なども考慮し、場合によっては専門家に相談することをおすすめいたします。
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