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遺言書がある場合の相続手続き

遺言書がある場合の相続手続き

遺言書がある場合で、遺言者が相続の内容について記載がされていた場合、その内容に沿って遺産分割を行うことになります。

遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示とされています。

民法964条においても遺言者は遺言によって財産の全部または処分することができると認められています。

また、遺言とは大切な遺族に対して「最後のメッセージを遺す」という意味もあるそうです。

相続においては遺言者の意思が最優先されるため、遺言書の内容は遺産分割協議や法定相続分に優先します。

よって遺言書があれば、遺産分割協議は必要ありません。

遺言の内容に沿って相続手続きを行うことを遺言執行といいます。

遺言書に遺言執行者が指定されている場合はその方が遺言執行者の役割を担うことになります。

遺言執行者には、相続人の一人やそれ以外の親族の方、相続人の委任を受けた専門家等が担うケースがあります。特別な資格は必要ありませんので誰でもなることができますが、民法1009条により未成年と破産者はなることができません。

 

遺言書の有無の確認

遺言書は、自筆証書遺言書または公正証書遺言書で作成されていることが一般的です。

①自筆証書遺言の探し方

自筆証書遺言の探し方ですが、遺言を書いた方が自分で保管している場合の保管方法としては、自宅のタンス、仏壇、机の引き出しや金庫の中に入れることが多いようです。また相続人に預けてあったり銀行や信託銀行に預けてあったり、親交の深かった方や専門家に預けている場合があります。自宅で見つからない場合は、亡くなった方と親交があったと思われる関係先へ、遺言書の有無について何かご存じでないかを問い合わせてみるといいと思います。

そして自筆証書遺言が見つかった場合は、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、「検認」の請求をしましょう。「検認」とは、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせることと、遺言の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言の偽造・変造をお防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。

②自筆証書遺言が法務局で保管されている場合

自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に保管している可能性がある場合は、法務局へ遺言書情報証明書の交付の請求をし,特定の遺言者の,自分を相続人や受遺者等又は遺言執行者等とする遺言書の調査をすることができます。なお遺言書情報証明書の発行は、一通につき1,400円ほどかかります。遺言書情報証明書は遺言の内容まで確認をすることができますが、被相続人の戸籍等や相続人の住民票を提出することが必要ですので、遺言書が保管されていることの有無をまず確認したいということであれば、遺言書保管事実証明書を請求する方がよいでしょう。遺言書保管事実証明書は一通につき800円ほどかかります。法務局で保管されている自筆証書遺言は検認の必要はありません。

③公正証書遺言の探し方

公正証書遺言の場合は、原本が公証役場に保管され、正本(法令によって原本と同じ効力が与えられた原本の写し)と謄本(原本全部の写し)が遺言者に交付されています。そのため、自宅で見つからない場合は、近隣の公証役場で遺言検索システムを用いて、全国の公証人役場に遺言があるかどうかの検索ができます。(※ただし平成元年以降に作成されたものに限ります。)遺言検索システムでは、遺言書の内容を知ることはできませんが公証役場に遺言が保管されていれば、近隣の役場で謄本を請求、あるいは郵送してもらい、遺言書を入手することができます。公正証書遺言は検認の必要はありません。

遺言書があとから見つかった場合は、遺産分割のやり直しとなってしまいますのでとにかくあきらめずに遺言書を探しましょう。

 

遺言書の内容と異なる遺産分割ができる場合

遺言書があった場合でも、例外として遺言書と異なる内容で遺産分割できる場合があります。

①相続人および受遺者全員が遺言書の内容を知っており、遺言書と異なる遺産分割に全員が同意している場合

遺産分割の当事者全員の合意があれば、法定相続分、指定相続分や具体的相続分に合致しない分割、遺言者の指定する遺産分割方法の反する分割も有効となります。

②遺言書が無効である場合

遺言書には、法律で形式要件が定められており、形式要件を満たしていない遺言書は、原則として無効です。

遺言書が無効である場合、相続時に遡ってすべての遺産が共同相続人の共有となるので(民法898条)、改めて遺産分割を行うことになります。

 

遺言書の内容が不公平な場合(遺留分侵害額請求)

「長男にすべての財産を相続させる」など遺言書の内容が不公平な場合には、「遺留分侵害額請求を行うことによって不公平な遺産分割を是正することができます。

遺留分とは、一定範囲の相続人のために、相続に関して法律上取得することが保障されている相続財産保留分のことをいいます。尚、一定範囲の相続人に兄弟姉妹は含まれません。

ただし、遺留分を侵害した贈与や遺贈などは、法律上当然に無効となることはありません。そして遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行った場合は、その遺留分を侵害する限度で効力を失うことになります。要するに遺留侵害額に相当する金銭債権が発生します。

家督相続が中心であった時代は、戸主の自由な財産処分を制限し、家産の散失を防ぐことが目的だったそうです。現在では、遺留分制度は遺言における自由な財産処分に制限を設けて、残された相続人の生活を守るためにあると考えると理解しやすいですね。

①法定相続分とは

法定相続分は、民法で定められている相続財産を相続する割合のことです。

配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などに法定相続分が定められています。

遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に保障される最低限の相続財産の割合のことです。

法定相続分は、遺言がない場合に相続財産を分けるための目安であり強制力はありません。

遺留分は、相続財産を最低限保障されている権利です。ただし、権利があってもそれを行使するかどうかは相続人の自由です。自身の遺留分を侵害されていても、権利を行使しなければ相続内容は変わらないのです。

相続人は自動的に遺留分をもらえるわけではないため、遺言内容に不満がある場合は遺留分請求を行う必要があります。現在では、遺留分侵害が発生している相続は金銭債権となっていますので不動産などは取り戻すことはできず、「お金」で清算することとなります。

②遺留分とは

遺留分は、亡くなった人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた制度です。具体的には、以下が相続人の範囲と遺留分の割合となります。

範囲の相続人が対象となります。

・配偶者:2分の1

・子ども、孫などの直系卑属:2分の1

・親、祖父母などの直系尊属:3分の1

子どもや配偶者等は、被相続人が亡くなったときに遺産を相続する権利を持っています。そしてこの権利は遺言によって奪うことはできません。ゆえに遺言によって特定の人に遺産のすべてを遺贈されたりした場合でも一定の範囲の相続人は、遺留分侵害額請求をすることによって必ず一定の財産を取得できます。

③遺留分侵害額請求はいつまでできる?(除斥期間)

遺留分は、不公平な相続をされた相続人を守るためのものです。しかし、いつまでも遺留分侵害額請求権があると他の相続人(侵害者)も心穏やかではありません。このような事情から、遺留分侵害額請求権には民法1048条で時効が定められています。

相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年

遺留分侵害を知らない場合、相続開始から10年

このいずれかの期間を経過すると時効となって侵害額請求権は消滅します。

 

遺言書があっても遺産分割協議が必要なケース

遺言書は、遺言者の財産の処分について書かれています。この遺言書にすべての財産が記載されておらず、記載漏れの財産があった場合はどうなるのでしょうか?

遺言書に記載のない財産でも相続は可能です。被相続人が亡くなったときに、遺言書が残されていない場合。相続手続きは法律の定める法定相続か、相続人全員の話し合いによる遺産分割協議を行うことになります。

被相続人が自分の財産の処分について遺言書で法定相続分と異なる意思表示をしている場合には、その意思を尊重して遺言に従います。

つまり遺言者の意思が最優先されることとなり、遺言書の内容は遺産分割協議や法定相続分に優先されるのです。

遺言書に記載されていない財産の取扱いについては、その財産について被相続人の意思表示はないということになりますので、遺言の効力は及ばないということになります。

財産の記載漏れがあったとしても、遺言書として正しく作成されたものであれば、遺言書自体は有効となります。

そのため、遺言書に記載されている財産については、遺言書どおりに相続することができます。

 

まとめ

以上が遺言書がある場合の相続手続きの流れとなります。

遺言書の内容によって様々な相続手続きが発生いたしますので専門家に相談されることをお勧めいたします。

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著者行政書士浜田政克
浜田政克行政書士事務所
(大阪府豊中市)

自身の相続に係わる経験から一念発起し、豊中市東豊中町にて行政書士事務所を開業。
遺言作成、相続手続きサポート、成年後見を中心にお客様に安心してご依頼いただけるワンストップサービスを行っております。
情報セキュリティ、個人情報保護法に精通し、「デジタル社会に迅速に対応できる法律家」として日々研鑽を積み重ねております。

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