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公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言書を作成する一般的な手順についてご紹介します。
遺言書を作成する必要性を検討します
遺言書があれば、その遺言の内容が法定相続分よりも優先されますが、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議にて話し合いをして遺産の分割方法を決めることになります。
遺言書がなければ、被相続人の意思を示すことができません。
そもそも遺言書を作成する必要があるのかがポイントになります。
遺言書制度の目的は、自分の財産を誰にどのように残したいか、遺言者の最終意思を尊重することです。
「死後に自分の財産等を誰にどれぐらい残したい」という意思があるかどうかが大事です。
公正証書遺言とは
公証役場の公証人の前で作成する遺言書のことです。公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します。※出張制度もあります。
公正証書遺言の作成
①必要な書類を集めます。
・遺言者の戸籍謄本、遺言者と財産を譲る相続人の続柄がわかる戸籍謄本、相続人以外の方に財産を譲る場合はその方の住民票の写し、不動産の登記事項証明、固定資産税納税通知書、預貯金の通帳のコピー、印鑑登録証明書などを集めます。
・遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書
ただし、印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、旅券、マイナンバーカード(個人番号カード)、住民基本台帳カード(同カードは平成27 年12 月に発行を終了していますが、有効期間内であれば利用できます。)等の官公署発行の顔写真付き身分証明書を遺言者の本人確認資料にすることもできます。
・ 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの。法人の場合には、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)
・不動産の相続の場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
・ 預貯金等の相続の場合には、その預貯金通帳等またはその通帳のコピー
②遺言内容を考えます。
遺言書は変更や作り直しが可能であり、日付の新しいものが有効となります。
■遺産相続に関する事項
・推定相続人の廃除、廃除の取消し(民法第893条、第
遺言で相続人の廃除をしたり、廃除を取り消したりできます。
・共同相続人の相続分の指定又はその委託(民法第902条)
遺言者は遺言により法定相続分とは異なる各相続人の相続分を指定することができます。また第三者に相続分の指定を委託することができます。
相続分の指定がされると、法定相続分に優先して各共同相続人の相続分が定まります。
相続分の指定はあくまで各相続人の相続分の割合のみを指定しているため、相続人全員で誰がどの財産を受け継ぐかを話し合い決定しなければなりません。
ただし、相続債務の債権者はこのような遺言の内容に従う義務がありませんので、相続債権者は相続分の指定にかかわらず法定相続分に応じて請求をすることができるので注意が必要ですね。
・特別受益者の受益分の持ち戻し免除(民法903条第3項)
遺産分割において相続分から差し引かれる生前贈与や遺贈などによる特別受益を考慮に入れないように免除することができます。
・遺産分割の方法の指定又はその委託、遺産分割の禁止(民法第908条)
財産をどのように分けるか、具体的な遺産分割の方法を指定することができます。また、第三者に分割方法の指定を委託することができます。
相続開始から5年を超えない期間を定めて、財産の分割を禁止することができます。遺言書で遺産分割が禁止されていたら、相続人全員が合意しても遺言書と異なる遺産分割協議は無効となります。
・共同相続人の担保責任の定め(民法第914条)
相続後の相続人同士による担保責任を軽減したり、加重したりできます。
遺産分割により瑕疵のある財産を相続した相続人は、他の相続人に対し、損害賠償の請求を行うことができます。
ただし、この責任は実際に受け取った財産に応じた責任であるため、財産を相続した割合によって負担する割合も異なります。
・遺言執行者の指定又は指定の委託(民法第1006条1項)
遺言内容を実行させるための遺言執行者を指定しておくことや、第三者に指定を委託することができます。
もし指定のない場合は、利害関係人(相続人、受遺者など)が家庭裁判所へ申し立てをすることで、遺言執行者の選任を受けることができます。
■財産処分に関する事項
・包括遺贈・特定遺贈(民法964条)
遺贈には、包括の名義での遺贈(包括遺贈)と特定の名義での遺贈(特定遺贈)があります。
遺贈は遺言によって財産の割合を指定して、特定の財産を誰かに引き継がせることです。
財産を相続人以外の人に贈与することもできます。
・遺留分減殺方法の指定(民法第1034条)
民法改正前の規定です。令和元年6月30日までに開始した相続については、遺留分の侵害額請求を受けた際の負担額の順序を遺言で指定することができました。
・寄附行為(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第158条2項)
財産を寄付することができます。財団法人を設立することができます。
・信託の設定(信託法第3条2号)
財産を指定した信託銀行等に預けて、管理、運用してもらうことができます。
■身分行為
・認知(民法781条2項)
婚姻関係にない相手との子その親子関係を認めることができます。胎児に対してもできます。
自分の子どもであると法的に認めることになります。
・未成年者の後見人の指定(民法第839条)
推定相続人に親権者のいない未成年がいる場合、後見人の指定をすることができます。さらに後見人を監督する後見監督人の指定をすることができます。
・未成年者の後見監督人の指定(民法第848条)
未成年後見人を指定することができる者は後見人を監督する後見監督人の指定をすることができます。
■その他
祭祀承継者の指定(民法第897条1項)
先祖の祭祀を主宰する人、墓や仏壇などを受け継ぐ人を指定できます。
被相続人による祭祀主宰者の指定方法は、方式についての定めがなく、生前行為や遺言によれば十分であって、それらは、口頭でも、書面でも、明示的でも、黙示的でもよいとされています。
遺言として法的効力のある事項は、身分に関すること、財産の処分に関すること、相続に関することとなります。
法的な効力は及ばないけれども想いを書くことができます。これを付言事項といいます。
遺言書を書くにあたっての心境や相続についての考え方を記しておくことはとても大事です。また残された家族への思いを記すことは相続トラブルを防止することにつながります。
③作成日程、証人の依頼等について公証人と交渉・調整をします。
公証役場に電話やメールをしたり、予約を取って公証役場を訪れたりして、公証人に遺言の相談や遺言書作成の依頼をします。
相談や遺言書の作成に当たっては、相続内容のメモ(遺言者がどのような財産を有していて、それを誰にどのような割合で相続させ、または遺贈したいと考えているのかなどを記載したメモ)を、メール送信、ファックス送信、郵送等により、または持参して、公証人に提出をします。
公証人は、提出されたメモおよび必要資料に基づき、遺言公正証書(案)を作成し、メール等により、それを遺言者等に提示します。
遺言者がそれを確認して、修正したい箇所を摘示すれば、公証人は、それに従って遺言公正証書(案)を修正し、確定します。
④公証役場にて公正証書遺言書を作成します。
遺言当日には、遺言者本人から公証人に対し、証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げていただきます。公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上で、確定した遺言公正証書(案)に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、遺言の内容に間違いがないことを確認します(内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。)。
遺言の内容に間違いがない場合には、遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をすることになります。
そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書が完成します。
遺言者に遺言書の正本と謄本を交付され、原本は公証役場で保管されます。
正本、謄本については遺言者自身または同居者等の信頼できる方が保管しましょう。
遺言者が亡くなったときに、相続人等に遺言書を見つけてもらわないと遺言書を作成した意味がありませんので十分な検討が必要となります。
⑤遺言の証人、立会人の資格
公正証書遺言をするためには、遺言者の真意を確認し、手続が適式に行われたことを担保するため、証人2名の立会いが義務づけられています。
次の人は遺言の証人となることができません。
・未成年者
・推定相続人又は受遺者
・推定相続人又は受遺者の配偶者及び直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
自身で証人を見つけられない場合には、公証役場で紹介してもらうことができます。
その場合、1人につき5,000円前後の費用がかかります。
⑥公正証書遺言を作成する場合の手数料
公正証書遺言を作成する場合の手数料の計算は、公証人役場のウェブサイトをご確認ください。
https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02/2-q13
まとめ
公正証書遺言のメリットは
・法律の専門家の公証人が作成するため形式上の不備で無効になることがない
・法律の専門家の公証人に作成してもらえるので、自分で文字を書く必要がなく、書き間違える心配がない
・公証役場で保管されるので、紛失、変造、偽造、破棄などのリスクがない
・家庭裁判所の「検認」が不要で、すぐに遺産分割ができる
などです。
公正証書遺言なら、安全・確実に遺言を残せます。
遺言者の方におかれましては、遺言作成後に、家族関係が変化したり、財産内容が変化したりします。遺言書の目的は、いままで築いてきた財産を誰にどれぐらい相続させるか、自分の意思を反映させることです。
遺言作成後はご自身のライフステージの変化に合わせて遺言書をメンテナンスすることをおすすめいたします。
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